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658 次世代PHSで1Gbpsが出るかもしれない

更新する時間が取れないので、更新が疎かになっていてすみません。

以下、そのような事情によりネタに近い記事です。


◆ウィルコムの喜久川社長、「次世代PHSでも数百Mbpsを目指しています」

ウィルコムの喜久川社長へのインタビュー記事が出ています。

開拓者の矜持で荒れる市場に対峙 次世代PHSは業界最高速に
http://www.telecomi.biz/backnumber_tc/interview_tc_0805_1.htm

これも記事に出来ていないのですが、このインタビューでも次世代PHSの展開計画を前倒しする可能性について言及がなされています。不完全な状態で慌てて早期展開すると相当悲惨な事になるのは過去の歴史が証明済みなので止めて欲しいのですが(初期FOMAなど)、しかし状況的に言って早期の次世代以降は望まれるところでもあります。

前から書いているように、次世代PHSが予想を上回る大成功をした場合には、歴史が変わる可能性もあります。その場合、次世代PHSに携わった人たちの名前が歴史に残るようなことだって考えられます。一方で失敗をすればウィルコムは存在すら危うくなります。

ぜひとも、良い意味で予想を裏切ってほしいところです。

さて、次にこの記事で話題にしたいところを引用したいと思います。

次世代PHSは最大20Mbps以上と、HSDPAの7.2Mbpsよりも速くなります。これまでは、マイクロセル方式により実効速度が理論値より落ちないことを強調していましたが、カタログスペックでも他の規格を上回り最高速になります。  今後、MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術を採用することで、さらなるスピードアップに取り組むつもりです。  現行PHSは32kbpsから800kbpsまでになりました。次世代PHSでも論理的に数百Mbpsまで通信速度を上げることは可能です。次世代PHSの開発部隊には数百Mbpsを目標に開発するよう指示しています。商用化するには消費電力などの問題がありますが、そうした問題は必ず時が解決してくれるはずです

「数百Mbpsを目標」という発言は新しい発言ではないかなと思います。これについて少し書いてみたいと思います。


◆同じくインフレさせてみる

これまでLTEがどうやって速度を「稼いで」いるかということを記事にしてきました。そして既存の第三世代ですら、スペック上の速度を上げる方法があることも記事にしました。

さて、ここで次世代PHSにも同じ考察を行ってみて、果たしてどの程度の高速化が可能なのかを考えてみたいと思います。

現行の次世代PHSの速度については、「最大20Mbps以上」という表現がなされています。これは「スペックの値」としては控えめな表現のはずです。実際に次世代PHSがサービスインした時に実測値で20Mbpsも出ることは基本的に無いはずですが、この点は他の技術でも同じです。

そこで、インフレの基本となる値としては、まずは「20~30Mbps」という幅を持たせた数値を用いて考察をしたいと思います。30は多すぎる気もしますが、後で中和します。

次世代PHS
・10MHz幅(上下兼用)
・20(~30)Mbps
・MIMOなし

まず、次世代PHSでは20MHz幅での運用が既に規格で用意されています。帯域を倍にすると、速度は倍以上になるはずですが、30をここで中和した事にします。

・20MHz幅(上下兼用)
・40~60Mbps
・MIMOなし

次におなじみのMIMOブーストを行いたいと思います。他の技術が用いているのと同じく、4x4MIMOを用いて、速度を四倍にしたいと思います。

・20MHz幅(上下兼用)
・160~240Mbps
・4x4MIMO

どうでしょう?LTEなどと見劣りしない数値になりました。ウィルコムはそういうことには予算とリソースは使わないと思いますが、もしウィルコムがデモ専用の試作機を作ってLTEのような「スペック発表競争大会」に殴りこもうと考えた場合には、「200Mbpsが出るマイクロセル技術である」というような発表は可能だという事になります。

私は基本的に「堅実に開発を続けて、実効速度と実績他陣営を圧倒した方が良い」という考えですが、メディアに「200Mbpsが出る国産マイクロセル技術」という発表がされるところを想像すると、ちょっと鳥肌かもしれません。

また、3.9世代相当の技術(LTE/Super3G、WiMAX、802.20、次世代PHSなど)は結局理論面の速度は似たようなことになるということもこれで解ったと思います。技術によって一桁以上違うような印象を与える報道が多いですが。もちろん進歩の余地がなくなったということでは決して無くて、こういう発表での速度以外の面ではかなりいろいろな「差」があるのではないかとは思います。

さて、実はまだ速度を公平に比較するという理由で「高速化」をさせる余地がまだ一つ残っています。

・LTE 20MHz幅×2(下り:基地局→端末、上り:端末→基地局)
・次世代PHS 20MHz幅(下り上がり兼用)

つまり、「次世代PHSは電波資源を半分しか使っていない」のです。よって、LTEの大本営発表との比較を考えて公平を期すには、2倍にしても悪くは無いという事にもなります。やってみましょう。

20MHz幅 4x4MIMOを2倍してみた
・320~480Mbps

「20Mbps」を基本にした計算でもLTEとなんら変わらない状態になりましたし、上側の数値についても500メガに到達するかもしれない数値になっています。

なおこれは40Mhz幅運用をした時の数値にもなりうるものかもしれません。


◆次世代PHSで3.5GHz第四世代

広い帯域での運用で速度を出すといえば、第四世代携帯の話題がそれに当たります。

第四世代携帯のイメージとされるもの
・100Mhz幅程度での運用
・静止時1Gbps
・移動時100Mbps

「静止時1Gbps」ばかりが話題にされて夢のような未来が来るかのような事が良く言われますが、100MHz幅で、理論値で、なおかつそれを全員で分け合って使うわけですからそんなにとんでもない数値でもありません。

100Mhz幅もの帯域を実際に確保するのは非常に難しく、使い勝手の良い周波数での確保は難しいと思われます。世界的に第四世代向けの帯域として指定されている帯域では、3.5GHz帯はもしかしたら大丈夫かもしれません。なぜならば、3.5GHz帯は電波がどうしようもなく取り扱いにくく、進んで使おうとするところが少ないためです。

まず、先ほどの計算と同様にして、次世代PHSを100Mhz幅運用にしてみる事にします。

次世代PHS
・10MHz幅(上下兼用)
・20(~30)Mbps
・MIMOなし

10倍します、

第四世代化次世代PHS
・100MHz幅(上下兼用)
・200~300Mbps
・MIMOなし

次にMIMOで四倍にしましょう、

第四世代化次世代PHS
・100MHz幅(上下兼用)
・800~1200Mbps(0.8Gbps~1.2Gbps)
・4x4MIMO

次世代PHSを100MHz幅運用できるようにすれば、1Gbpsに到達できるかもしれないということになりました。

というわけで、あっさりと「第四世代携帯を名乗れるだけのスペックがある」ということになってしまいました。


◆「難儀な3.5GHz帯」はPHS向けかもしれない

3.5GHz帯はとても取り扱いが難しい帯域です。電波は光のような性質が強くなって物陰に回りこまなくなり、減衰が激しくなって建物の中にも入りにくくなります。天気が変わるだけで電波状態はかなり変わるのではないかとも思います。

ですから、普通の携帯電話キャリアはスルーすべき帯域ではないかと思います。よっぽどの覚悟かよっぽどの自信があるか、あるいは3.5GHz帯を誰でも問題なく使えるような「枯れた」技術が出現するまでは、単に地雷ではないかと思います。

まず、マクロセルは成立不可能だと思われます。一つの基地局で広範囲をカバーするという考え方は、ある程度の出力の電波で周囲を照らせば、広い範囲に電波が問題なく行き渡る事を前提にしているためです。

となると、
・基地局を沢山配置する
・補完にしか使わない

後者は、3.5GHz帯は基本的に圏外だらけであることはすっぱり諦め、圏外の部分では既存の通信網を用いる方式です。つながる時だけ使うと。しかし、3.5GHz帯はあまりにも繋がらない可能性があるので、そのような前提をもって考えても結局同じ課題にぶつかるとは思います。

「基地局を沢山配置する」ですが、それはつまりマイクロセル化するということです。

先にも書いたように、3.5GHz帯は電波の挙動が非常に難儀なので、事前に計算してマイクロセル基地局網を作る事は困難ではないかと思います。基地局のカバーする範囲は教科書的理想では円で示されますが、この場合には崩れた円どころか、円とは程遠い複雑怪奇な形になると考えられるためです。

また、雨が降るだけでセル形状がまったく代わってしまったり、道路に車が沢山走っているときと走っていないときで形が変わる、電車が通るときだけまったく変なところに電波が強く届くなどのとても難しい状況になるのではないかと思います。

そして、そういう状況を前提として作られているのがPHSですから、既存の技術では対処が難しいこれらの状況にあっても、次世代PHSは「別段普段どおりに問題なく動作しつづける」ということも考えられます。

もしかすると、PHSすら想定していないような過酷な状況が待っているかもしれませんが、それでも長年の実績がある既存の技術を改良することで対応できるという点においては他よりも有利なはずです。

うまく行くとしても基地局をかなり多数作らないといけなくなるでしょうから、既存のキャリアにとっては最初から手を出す理由の無い帯域には思えますが、第四世代化した次世代PHSというのはありえるかもしれないということで少し書いてみました。

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