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657 HSPA+はどの程度速度が出るのか?

とりあえず更新します。


◆HSPA+の話題が出てきていますね

半年くらい前までは無駄にモバイルWiMAXの話題だらけでしたが、最近ではLTE(Super3G)の話題が多くなってきました。そして併せて、HSPA+の話題も出るようになってきています。

念のために簡単におさらいしておきます(すでに理解なされている方は先へ読み飛ばしください)。詳しくはブログの過去の記事を参照ください。

LTEとはドコモを含むW-CDMA陣営が開発している次世代技術のことで、Super3Gとか3.9世代携帯とか言われます。よく勘違いされているようですが、名前的には第三世代の発展版のように見えるのですが、実質的には技術的に違うものになっており、「第四世代の先行版」というのが正しい理解です。つまり、

3.9世代の正しい理解
・×:3+0.9世代
・○:4-0.1世代

結構わかりやすい説明ではないかと自分で思いますので、上記の説明は今後しつこく用いてゆきたいと思います。

なお、(モバイル)WiMAXや次世代PHSもUMBなども技術的にはLTEの親戚です。

一方で、現行の第三世代(あるいは第三世代の発展版)をさらに発展させようとしている流れもあります。こちらは本当の意味で第三世代をさらに進化させた存在です。

・第三世代:W-CDMA、CDMA2000
・3.5世代:HSDPA(HSPA)、EV-DO
# Rev.AやRev.Bがどう区分されるかは微妙なので曖昧にして誤魔化しました。

で、現行のHSDPAをそのまま進化させたのが、今回の記事で書く「HSPA+」のことです。

LTEは次世代技術の本命であるという「空気」ではあるのですが、現行技術と繋がっていないために、サービスインにはいろんな種類の「最初から整備をやり直し」が生じます。コストと労力が大変にかかります。また、サービスイン実績があるわけではないので、サービスインしてみると面白いように駄目技術だったという可能性もありえます。

HSPA+は現行技術をさらに増築したものなので、増築が重なっての無理感はあるのですが、既存のものと基本は同じなので「やり直し」はあまり発生しません。また、大失敗するリスクもあまりありません。


◆42Mbpsの正体

W-CDMA陣営の重鎮のエリクソン様は最近HSPA+のデモを良く行っているようです。

エリクソンというのはスウェーデンの通信会社で日本でいうNTTみたいなところです。ここは携帯基地局で圧倒的な力を持っているところで、3.5世代の基地局ではだいたい半分のシェアを持っている、とエリクソン自身は言っておられます。

日本人自身が日本で封じ込めてしまっているNTTと違い、エリクソンは国を代表する企業として世界的に大きな存在感を持っています。NTTがやりたい放題では私自身にも困る事は起きそうではあるのですが、しかし、どうにも引っかかる感じもします。

エリクソンはLTEでも主役ですが、3.5世代の発展版も大いに売りたいようです。そして、HSPA+でも速度が出るんだぞ、というデモなどを最近なさっているようです。よく出てくるのが「42Mbps出るようになります」という数値です。

この42Mbpsですが、こういうことでの数値ではないかと思います。

・3.6Mbps×2×2×1.5×2=42Mbpsくらい

つまり

・3.6Mbps×2(7.2化)×2(14.4化)×1.5(64QAM化)×2(2x2MIMO)=42Mbpsくらい

式の掛け算のそれぞれの意味については、しばらく前の記事をご覧下さい(この記事自体をむやみに長くするわけには行きませんので、すみません)。

まずは現状の説明から。

まず「3.6Mbps」ですが、これは素のHSDPAの速度のことです。つまりドコモの(今現在において大半の)の「ハイスピードなFOMA」の速度のことです。今のところは日本での基本は「3.6Mbps」で展開されているような状況です。

そして現在、導入が進んでいるのは、次の「×2」の部分です。3.6Mbps×2で「7.2Mbps」となりまして、少し前までイーモバイルが「最速」と盛んにCMしていた数字になります。またドコモも機種限定ながら7.2Mbps対応を開始しています。スペック上は二倍になりますが、利用時の速度が2倍になるわけではありません。

それ以降についてはまだ導入されていません。つまり上記の式の大半は「まだ全然実現されていない」ということにはご注意ください。

そして、式について考えて見ましょう。

実際に出る速度:
(3.6Mbpsであなたが実際に出ると思っている速度)×2(二倍にはならない)×2(一応速くはなる)×1.5(多少は速くなる)×2(状況次第、実用的ではないかもしれない)

あるいは現に7.2Mbpsのサービスを利用していて、その速度で考えたい人は、
(7.2Mbpsであなたが実際に出ると思っている速度)×2(一応速くはなるが)×1.5(多少は速くなる)×2(状況次第、実用的ではないかもしれない)

7.2Mbpsを基準にして、最後の×1.5と×2が最大限働くという前提に勝手にして、そこからの誤差は14.4化の×2を計算外にすることで帳消しにする、と考えてみます(これでは多すぎるのではないかと思いますが)。そうすると7.2Mbpsでの速度の3倍ということになります。ただし、MIMOまでフルに使っての話。

MIMO無しならば理論的な速度向上自体が×2×1.5で3倍ですから、速度2倍も難しいのではないかと思います。

つまり7.2Mbpsのせいぜい数倍がいいところだろうということになります。場合や状況や場所によってはほとんど速度向上無し、ということもありそうです。


◆しかしマーケティング上は意義あり

結局のところ、実質的な速度向上は劇的な感じではなさそうです。そのために基地局に大きなお金を投入するメリットがあるかについては(実質的効果を考えた場合)には微妙だということになります。

少なくとも一般人が42Mbpsというスペックから受ける印象と、実際に出る速度にはかなりの落差が生じる事にはなるでしょう。

しかしスペック上は「42Mbps」と恐るべき数字になりますし、この数字ならば真正の3.9世代技術にも大きく見劣りしません。そしてなにより、現行の3.5世代網に混ぜて運用する事が出来るので、切り替えの大作業で悩む必要もなくなります。また、LTEについても確実に速度向上(電波の利用効率の向上)は図られるものの、こちらも「現行と同じ帯域幅で使う限り」は劇的な速度向上は起きません。

ユーザに「実際には42Mbpsには程遠い数字しか出ていない」ということを気がつかせない仕組みを用意できるのならば、HSPA+で当面は問題ないかもしれません。


◆LTEが「外れ技術」だった場合には

LTEがハズレの技術(サービスインしてみると駄目だった場合)や初期トラブルが酷かった場合には、HSPA+か単なる3.5世代で様子見するのが正解ということになります。

あまりにLTEが駄目だった場合には、HSPA+をさらに高速化する方法も考えられます。

帯域幅が5MHz幅×2の前提においてはHSPA+でおそらくもう限界に近いのはずですが、ならば「帯域をもっと使ってしまえば」速度を上げる事も出来なくはありません。例えば、5MHz幅×2×2などにする方法です。つまり、5MHz幅の帯域を二つ束ねて使ってしまう方法です(10MHz幅×2ではない)。

これならばHSPA+の「既存の方式と混ぜて使える」という利点そのままに、42Mbpsよりもさらに先に進む事も出来ます。まだまだ延長戦はできるということです。

よって可能性としては、数年度にはHSPA+の発展版が流行っている、ということも考えられます。おそらくドコモはどのような状況になろうとも驚くべき執念でLTEの改良を続けることになりましょう。そして年月がかかってもそれを成し遂げて、最終的に世界最強のLTE基地局網を日本に完成させる事になると思います。ドコモにはそういう力があります。

ただし、他キャリアはLTEをHSPA+で様子見できる可能性があるだけではなく、「HSPA+の先」すらあるという事には注意する必要があります。ドコモと一緒に炎上する義理はありませんし、ドコモと一緒にLTEをスタートしても同じように成功できるとは限りません。

ただし、LTEが初期から素晴らしい技術として出てきた場合には、HSPA+への投資は単なる無駄になります。ただし、既存の3.5世代と混ぜて使えるため、おそらくそれ以上のダメージは発生させない事でしょう。いずれにせよ、判断は難しいところでしょうが。

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