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720 モバイルWiMAXに悪いニュース、スプリントがやはりピンチ、そして「ノーテル」もピンチ

モバイルWiMAXの話題です。

またもや、悪いニュースです。


◆まえおき

まず最近このブログに来られた方のために説明します。

「モバイルWiMAX」とは(ちょっと前まで)マスコミで話題になっている?なっていた?通信技術です。

ですが、モバイルWiMAXはいろんな意味で割とヤバイこと、少なくとも一部メディアが書いていたように、モバイルWiMAXは必ず世界を席巻するとか/モバイルWiMAXは非常に優れた技術だとか/日本はモバイルWiMAXで欧米に遅れちゃうよ、という意見はどうも怪しいのではないかということを、ここしばらく記事として書いています。

#2007年末~2008年2月あたり?の記事を読んでください

さて記事のタイトルになっている「スプリント」というのは、アメリカの携帯電話会社スプリント(Sprint Nextel)のことで、もしスプリントがモバイルWiMAXの計画中止を決定すると、事実上北米でモバイルWiMAXは頓挫します。そういう瀬戸際にあります。


◆スプリントは巨額赤字

ここでさらに悪いニュースです。

ネット/テレコム市場セクタの株価下落が顕著に
http://www.computerworld.jp/news/trd/99750.html

記事の書き出しはこうなっています。この記事はアメリカ全体の話題について書いている記事だということを考えて読んでください。

今週は米国Google、米国Sprint Nextel、米国Nortel Networksに関する気がかりな報道を受けて、投資家はネット/テレコム市場セクタへの投資を控えている。また、デルの四半期業績も、消費支出の低下をうかがわせるものとなった。

四つの会社の名前がありますが、そのうちの二つはモバイルWiMAX関連です。

まず「Sprint Nextel」はこれまで書いてきたとおり、北米で唯一モバイルWiMAXをやろうとしている携帯電話会社です。そして「Nortel Networks」というのは、これまでこのブログでは書いていませんでしたが、モバイルWiMAXの基地局関連の会社です。

まずスプリントの部分を引用しましょう。

Nextel買収に伴うトラブルを抱えていたSprint Nextelは28日、第4四半期の295億ドルの赤字決算を発表し株価が下落した。同社のCEO、Dan Hesse(ダニエル・ヘッセ)氏は、厳しいモバイル(携帯・移動体通信)市場環境の下で契約者をさらに失う可能性があることも明らかにしている。同日の株価は86セント安の8ドル9セントで引けた。

「同社のCEO」というのは、2007年のおわりの方に前のCEOが交代させられて、建て直しのために新しくやってきた人のことです。そして「建て直し」のためにモバイルWiMAXの計画中止も検討しているとされます。

CEOが交代してからかなり経っているわけですが、スプリントはこれからどうするのかはまだはっきりしていない状態です。モバイルWiMAXをどうするかについてもまだ結論のようなものは出てきていません。ずっと「考え中」の状態です。

そして、
・(予想されていた事とは言え)巨額の赤字
・今後の携帯電話事業の見通しは引き続き悪い
・契約者の減少はさらに続く
ということが発表されて、株価が下がっちゃったというわけです。

やっぱり、モバイルWiMAXどころではなくなりつつあるというわけです。今この状態でモバイルWiMAXへの投資を行うのであれば、命がけの勝負になります。そして残念な事に、モバイルWiMAXはそんな大勝負に値するものかどうかは微妙です。一旦撤退して体制を整えなおし、その後にLTEに鞍替えするのが正解であるという意見はさらに強くなるはずです。

一方でインテルやサムスンやモトローラなどは、モバイルWiMAXを中止されると北米が陥落するのでものすごく困ります。水面下でややこしい綱引きが続いているのではないかと思われます。


◆ノーテル

次にノーテルの部分を引用します。

27日にテレコム市場セクタを揺るがしたのが、Nortel Networksの人員削減と事前予想を上回る赤字の発表だった。同社の第4四半期売上高は前年比4%減の32億ドルで、同日の株価は1ドル52セント安の9ドル93セントで引けた(28日の終値は9ドル7セント)。

スプリントは携帯電話会社でしたが、ノーテルは携帯基地局を作ったりしている会社です。そして、モバイルWiMAXの基地局に力を入れようとしていたところです。

ノーテルは主にGSMの基地局を作ってきました。GSMは世界標準ですからごく普通のことです。しかしその後、第三世代では全くダメな状態になってしまっていました。ノーテルの赤字というのは「第三世代に乗り遅れて挽回できなくなった」ための赤字です。

そこでノーテルは一時期の世界の話題を席巻していたモバイルWiMAXに飛びついて状況を変えようとしました。

以前の「モバイルWiMAXを嫌っている陣営」に関する記事から「引用の引用」をすると、

続き:モバイルWiMAXを嫌っている/避けている陣営
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2008/01/749_wimax_f209.html

一方、説明会に同席したクアルコム・ジャパン代表取締役社長の山田純氏は、WiMAXに賛意を示している韓国サムスン電子社、米モトローラ社などを「携帯電話におけるインフラビジネスに脱落した人々」と酷評。技術的な観点よりも、ビジネススタイルを優先した(先行投資による市場支配を狙った)一種のギャンブルであるとした。

まさしくクアルコムが言っているとおりのことをノーテルも行っていたわけです。そして(少なくともいまのところは)ノーテルの勝負は裏目に出つつあります。

「予想を上回る赤字」でニュースになっていますが、まだしも撤退と転進が可能なスプリントと違い、ノーテル(の基地局)には逃げ場がありません。この状況から抜け出す方法はひょっとしてもう無いかもしれません。


◆モトローラ(電話機)

ここまではスプリントとノーテルに関する話題でしたが、モバイルWiMAX陣営のモトローラも苦境にあります。クアルコムが「脱落組」だと言ったとおりでもあります。

モトローラは現在、携帯電話機の事業をどこかに売却しようとしていると言われており、携帯基地局の事業でノーテルと組もうとしているようです。

まず今回の話題とは直接関係しない「電話機」の方について。

日本には海外の電話機はほとんど入ってきませんし、日本の電話機はほとんど海外で売れません。ですが世界規模で見ると少数のメーカーが世界で多量の電話機を売っている状態になっています。ノキア、サムスン、モトローラ、LG、ソニエリなどでしょうか。ノキアがリードをつけての一位の状況です。モトローラはかつては二位で、現在も三位だったはずです。

モトローラはここしばらくで急速にシェアを落としたそうで、つまりあんまり調子が良くない状態です。建て直しもしようとしたようですが、結局売却する流れのようです。売却相手としては、LGなどの上位をうかがっているメーカの名前が聞かれます。

しかし話はまだまとまっていません。日本にはあまり居ないと思いますが、モトローラユーザの方は、自分の愛機の後継機は「他社」の名前で出るかもしれないということになります。


◆モトローラ(基地局)

基地局の方については、前回の記事で書いた「ノーテル」と「モトローラ」が新会社を設立を検討しているとされます。

米Motorola、加Nortelと携帯キャリア向け装置で合弁会社設立か
http://journal.mycom.co.jp/news/2008/02/12/008/index.html

両社とも、モバイルWiMAXに手を出している状況については似ています。

この話は総合的な話題ですが、モバイルWiMAXに限定した話題として考えてみますと、少し前までならばモバイルWiMAX市場を巡って各社が陣取り合戦を行っているかのような印象もあったと思うのですが、残存勢力が生き残りをかけて戦力の集中を図っているように見えてしまいます。

あるいは、こうやって色々なところが関係してしまっているので、スプリントはなかなか判断が出来ないのかもしれません。

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コメント

んん、まいったことになりそうですねえ。
日本の2.5GHz業者に影響を与えそうです。

私はXGP成功期待者なんですが、
モバイルWiMAXはXGP打ち上げのための補助ロケット装置と思っています(笑)

競争相手としてのプレッシャーもそうなんですが、mWiMAXとはハードの部分のほとんどが共通だという話で。XGPのコストダウンのためにもmWiMAXのスケールメリットが欲しい筈です。

このままではXGPはスペースシャトルだけで大気圏を突破しなくてはならないハメになるのではないかしら?

投稿: TT | 2008/03/01 17:33

LTEの到来をまえに、2.5GHzは軌道に乗せておかないといけないわけで

個人的にはmWiMAXとXGPの大連立MVNOを行うのがいいと思うんですが。(デュアル端末があるという前提で)
イモバのあのローミングプランがOKならこれもありでしょう。

またはKDDIもXGPに乗り換えちゃうとか(笑)
アイピーモバイルも末期には中華3Gに計画を変更しようとしていたし(資金繰りさえつけばそれはアリだったようだが)。孫さんが怒るだろうけど。

(ほんとはすごく嫌なんだろうけど)クアルコム様にお慈悲をもらって、UMBを融通してもらうのが一番スマートかな。

しかし、日本がmWiMAXの孤児になってもKDDIは計画を推進しなければならないのだろうか。

2.5GHz祭りのとき、willcomを「mWiMAXじゃないこと」を理由に叩いていた面々には現在の状況についてきっちりコメントを頂きたいところです。

投稿: TT | 2008/03/01 18:14

Sprintとのローミングを考えてるそうです。やはりIntelがテコ入れしたりするんでしょうか...

ワイヤレスブロードバンド企画が事業会社化。新社名などを発表
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/21131.html

投稿: | 2008/03/03 23:00

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