718 三菱が携帯から完全撤退 / 三洋より厳しい / これから起こるかもしれない事
「三菱が携帯から撤退」のニュースに関する記事です。
全くの予想外だったかと言われればそうではありませんが、しかしショックなニュースです。
◆ドコモ直参の三菱が撤退
三菱が携帯電話事業からの撤退を発表しました。つまり、今後は三菱の携帯電話は発売されなくなってしまうということです。具体的にはD906iはもう発売されなくなったということです。
撤退自体は一部で囁かれていた事でもあるようですが、昨日までD905iのCMが盛んに放送されていましたので、あまりに急にも思えます。
三菱はドコモがドコモになる前(電電公社の一部であった頃から)からのドコモの直参の一社でした。具体的には以下の四社は大昔からドコモと特別な関係を持っているところでした。
・NEC
・パナソニック(松下)
・富士通
・三菱
しかし三菱はこの四社から脱落する事になります。
三菱は携帯他社にも端末を提供していた事がありましたが(ボーダフォンのプリペとか)、最近ではドコモ向けに限定しており、逆にいえばドコモ向け以外を切っていました。しかしながら、それでもダメだったようです。
ちなみに、富士通も長い間ドコモ向けの携帯しか作っていません。パナソニックは松下電器(当時)全体が経営の建て直しをする時に、選択と集中と称してドコモ向けの端末だけに集中しました(最近になって他キャリアへの再進出を進めていますが)。そしてNECは長い間ドコモの携帯の顔のような存在でした。同じようにドコモと長年組んできた三菱でした。
かつてドコモがW-CDMAを開始する際に、この四社のなかに東芝が入り込もうとしたことがありました(四桁FOMAの時代)。東芝はFOMAがとても酷い状態だった時期にW-CDMAの基地局を提供し、苦労して端末を提供しました。しかし、東芝はドコモ一家に入り込む事が出来ず、(聞いた話では)半ば喧嘩別れの形でドコモと袂を別っています。東芝は現在、「ドコモ以外の全キャリア」に端末を供給しています。
ちなみにシャープは全キャリアに端末を供給しています。ここは何でもアリです。最近では中国大陸市場に新規参入するという発表もありました。
このように結束してきたドコモ一家から脱落者が出てしまったということです。
三菱が残りの三社と違うのは、ドコモのインフラ側を請け負っていないことでしょうか(記憶によるとそのはずです)。もしかしたらそのあたりが今回の結果になにか関係しているのかもしれません。
◆三洋と違うところ
携帯からの撤退というと、最近では三洋の撤退がありました。しかし、三洋の撤退と三菱の撤退では話がかなり違います。
三洋の場合には本業が傾いたために、携帯部門を他社に売る形での撤退でした。三洋としては携帯部門とお金を引き換えにしたのであり、また三洋の携帯部門は売却先の京セラの中で生き続けることになります。つまり、「SA」の携帯端末を作っていた人たちは、引き続き携帯端末を作るのです。
三菱の場合には、「携帯部門の消滅」となっています。「ドコモのD」を作っていた人たちは今後携帯電話を作りません。人員は三菱内部の他部門に再配置されることになるそうです。つまり、何も残らないのです。
◆連鎖で富士通もドコモから撤退するかもしれない
これまではドコモ端末(の国内メーカ)は、ドコモ一家の四社と、J-Phoneでの絶大な人気を背景に参入してきたシャープの五社で生産されていました。
ドコモは各社にかなり過酷な要求を行い、それに応えて端末を開発し、完成後もドコモの最終チェックを通過しなければ発売はまかりならんというのがドコモ一家の掟でした。ドコモの端末の品質が一定以上なのはこの仕組みのためでした。しかし端末の開発費は大変なことになります。そこで、五社はそれぞれ連合を組んでいました。
・NEC+パナソニック
・三菱+富士通
・シャープ
NEC+パナソニックの連合はよく知られている話で、NのソフトウェアとPのハードウェアでそれぞれ分業したとか言われているものです。連合後はPの端末のソフトウェアがN化し、ずっとPのファンだった人(Pのソフトウェアは使いやすいという評価が多かった)には悲しい出来事でした。
富士通(F)と三菱(D)も開発で協力していました。しかし今回三菱が脱落することになります。よって、富士通は組む相手を失う事になります。さらに悪い事に、三洋と違って「消滅」ですから、三菱の携帯部門ごと富士通が引き受けるというような事も出来ません。
非常に個人的な感想でもありますが、「人気」があるのはNやPで(特にPはあざといと思う事もあった)、SHは機能てんこもりが好きな人の端末で、しかし良く出来ているなあと思えるのはFやDだったように思います。
今回の記事からは脱線しますが、特にFはもうちょっと評価されてもいいと思います。あるいはFは良い仕事をしているにもかかわらず筐体デザインとプロモーションが下手なのかもしれません。
三菱のスライド式+クルクルを愛用している人にとっては今回の決定はとても悲しい事かもしれません。「私が思うに」ですが、Dは良く出来ていますから、売れた台数はともかく持っている人の満足度は高いはずです。
また、ここしばらくDが盛んにCMをしていたように見えたのは、「この目標をクリアできなければ終わりだからね」と言われていたゆえに最後に振り絞った力だったのかもしれません。
◆減るドコモ直参
三菱が撤退しなければならなかったのは、儲からなくなったからです。
もちろん世界的に競争が激しくなっているということもあるのですが、日本の国内市場はほぼ閉じているので、国内的な事情によるところが多いでしょう。また、メディアでは「携帯市場が飽和したから」という説明もあるようですが、飽和しようと機種変需要がなくなるわけでもありません。
ドコモからの過酷な要求が続いた事で開発費は下がらなかったことと、一方で総務省が端末価格と携帯料金の分離をさせるように指導した結果、どうやらここしばらくは携帯の機種変間隔が伸びていて、その結果そもそも端末の売れる数が減ったという事情もあるようです。もしかすると総務省が何もしなければ、三菱は撤退していないかもしれません。
ドコモは三菱の撤退決定に対し、「海外メーカを・・」というようなコメントをしているそうです。海外メーカにドコモ様方式での端末供給が可能なのかどうかと思えてしまいます。海外で販売されているものを日本国内に持ってくるだけならば、どうしてもドコモ本流の端末にはなれないでしょう。かといってドコモ方式に付き合ってくれる(あるいはドコモ方式に「最後まで」付き合ってくれる)海外メーカはそんなにいないと思います。
もし仮に似たポジションの富士通も脱落すると、古参で残るのはNECとパナソニックだけになります。しかもこの二社はすでに提携済みなので、ドコモ直参は一つという事になりかねません。
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コメント
参考までに
三菱は、開発をまったくやっていませんでした。
投稿: nononame | 2008/03/04 18:27