717 アメリカの「99.99ドル完全定額携帯」は日本では実施できない件
少し前から話題になっている話についてのツッコミです。
◆アメリカで99.99ドル完全定額携帯はじまる
少し前から、アメリカで完全定額がはじまったというニュースが出ていました。
米大手キャリア3社、音声定額プランを発表
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0802/20/news046.html
定額なら日本でもやっているよね、と思うかもしれませんが、
3社のプランは月額99.99ドルで、他社の携帯電話や固定電話とも無制限に通話できる。
というわけで、完全定額という表現にしてみました。
まずこの定額は、ベライゾン(Verizon Wireless)が開始しました。ベライゾンは以前の記事で書いた「LTEに寝返った」携帯電話会社です。
765 迷子のCDMA2000陣営(含むKDDI/au)
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2008/01/765_cdma2000kdd_339e.html
続いてAT&TとT-Mobileも同様の定額を開始しました。
そして、このブログで話題になっているスプリント(Sprint Nextel)は音声完全定額を上回る定額を開始します、音声だけではなくデータ通信も99.99ドルで定額にしてしまいました。つまり、文字通りの完全定額です。
99.99ドルなので、日本円にして一万円は超えます。しかし日本には無い画期的なサービスが始まったようにも思えます。
しかしこの定額、日本でいう定額とは少し意味が違います。
◆日本では実施できない定額制度
記事を書いたのは、(案の定というか)このニュースを基にして日本叩きを始める人を見かけたためです。曰く、日本の料金は高すぎる、日本はチャレンジが足りない、日本のいびつな制度が・・・
実はこの定額、日本では実施できません。
というのはアメリカで携帯電話から携帯電話に電話をすると、「電話をかけた側」も「電話を受けた側」の両方ともに課金される仕組みで、それだから実施できる「定額」なのです。
日本では、電話をかけた場合の料金は電話をかけた人が全額負担します。・・ということをわざわざ書くのも馬鹿馬鹿しいくらいの常識です。電話に出るだけでお金を取られる事は基本的にはありません。この日本人の感覚で考えると、電話を受ける側も料金を取られる可能性があるというのは非常識に思えます。
しかし、考えてみてください。
・あなたはドコモユーザだったとします。
・携帯相手に電話をすることになりました。
・相手がAUなのかドコモなのかソフトバンクなのかはわかりません。
・相手がもしソフトバンクならば若干高い料金を取られてしまいます。
日本の料金制度は相手の都合で自分の負担額が大きく変わってしまう制度といえなくもありません。ならば、こういう風にして「公平」にすること事も考えられます。
・自分の電話機から相手の電話機の通信経路を考える。
・通信経路のうち、自分の責任の部分は自分がコスト負担をし、相手の責任の部分は相手がコスト負担をする。
となると、結局電話をかけた側の人間が負担をするのは、「自分が責任をもつ部分だけ」になります。例えばドコモ=ソフトバンク間の通話だとすると、「ドコモ側」のコストだけを自分が負担するのだと思いましょう。
上記の例ならば、ドコモ→ソフトバンクに電話をかける場合、ドコモ側の料金を電話をかけた側が負担し、ソフトバンク側の料金を「電話に出た側」が負担するという仕組みです。
実は不正確な説明になってしまいますが、アメリカの「電話に出た側も料金を取られる」という仕組みはこういう感じでの課金だと思ってください。
すでにおわかりになった人も多いと思いますが、こういう仕組みなので、アメリカでは完全定額を実施する事が可能なのです。
つまり、日本で完全定額を実施しようとすると、「他社宛に通話をした場合に、他社に対して支払うコスト」が問題になって定額が非常に難しくなりますが、アメリカにはこれが(あまり)無いということです。
例えばウィルコム→携帯に通話を行う場合、ウィルコムの通信回線だけではなく、携帯電話会社の回線も使わないと相手の電話機に到達できません。日本の課金方式ではこの通話のコストの支払い主は全てウィルコム(電話をかけた側)ですから、「携帯電話会社側の回線を使うコスト」をウィルコム側が全額を携帯電話会社に支払わなければなりません。しかし、アメリカ方式では「そうではない」ということです。だから、完全定額を実施できるのです。
したがって、アメリカ式の完全定額は日本ではそのままでは実施できないということになります。
また、ウィルコム定額(同一キャリア内定額)を日本で実施する難易度と、アメリカで完全定額を実施する難易度は似たようなものという事になります。
よって99.99ドル(一万円超)で日本式の24時間定額をやっているのと同じようなものだということになりまして、むしろ日本のほうが進んでいるとも言える状況かもしれません。
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