746 アッカ、千本社長の要求を撥ね付ける / 「アッカの敵の敵」はアッカの味方
続きの記事を書いているところだったので、すこし執筆が遅くなり案した。
アッカとイーアクセス≒イーモバイルの騒動の続きです。
◆アッカ、千本社長の要求を拒否
以前から記事で取り上げておりましたが、イーアクセス≒イーモバイルの千本社長が、アッカの経営陣の交代(社長やめろ)を突然要求したという騒動がありました。
今度は千本社長が「アッカ社長の退任」を要求
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2008/01/759_b752.html
その後、千本社長はアッカの株価下落や経営陣の批判に始まり、一時期は協業や経営統合の可能性や買収する可能性などについて発言したのですが、他の株主の反発が大きかったのか、それらを撤回するようなことがありました。
訂正だらけですがさて本音は?
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2008/01/752_a1fe.html
そしてとうとう、アッカ側からのリアクションが出てきました。アッカの経営陣の回答は「提案の拒否」で、なおかつ千本社長への逆ツッコミでした。
◆株主名簿閲覧請求を拒否
まず1月23日に、「株主名簿閲覧請求」が拒否されていました。
名簿閲覧請求を拒否 アッカがイー・アクセスに対抗
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/080128/biz0801282134020-n1.htm
これは、千本社長が理由をつけて「アッカの株主の名簿を見せなさい」と要求していたものが拒否されたというものです。表向きの要求の理由は「株主の利害に直結する重大事項を早期に全株主に知らせることが株主の共通の利益になる」というものでしたが、当然ながらこれは表向きの理由です。
このような要求をした本当の理由は千本社長がそれぞれの株主に連絡を取って(千本社長の要求を通すための)委任状を獲得するためのはずです。
大株主については名簿を貰ってくるまでも無く連絡先は簡単にわかりますが、アッカの株の株の多くは一般に取引されている株で誰がどれだけ持っているやらわからないのです。そこで、株主名簿があれば千本社長から株主全てに連絡が出来ますが(変なたとえですがダイレクトメールみたいなものですね)、そうではない場合には株主への呼びかけを行って応答があるのを待つということをしなければなりません。
アッカは「業務が実質的に競争関係にある」という理由で名簿の提供を拒否をしました。千本社長もこの理由は違法ではないので仕方が無いと引き下がっています。
逆に言えば大株主との話し合いはとっくに行われているはずですが、今のところ千本社長に大株主が賛同意見を出したという発表はありません。
◆「提案には中身が無い」と提案を拒否
さらに1月29日に、アッカは提案に対して拒否の姿勢を示します。
アッカ、イー・アクセスの提案に「反対」 対立決定的に
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0801/29/news108.html
その理由は「企業価値向上の実現に向けた具体的方策が示されていない」というものでした。そして、アッカ自身によって今後の事業計画が発表されています。
(1)ADSL事業の拡張として公衆無線LAN網の展開を検討する、(2)WiMAXとHSDPAはMVNO(仮想移動体通信事業者)方式で展開する、(3)ADSLは個人向け低価格サービスの積極販売、光は法人向けの強化などで事業の維持・強化を図る
そして、この件に関する騒動はしばらく続きそうです。
詳細は2月14日予定の2007年12月期決算の発表と合わせて説明するとしている。
◆拒否の理由
それぞれの拒否の理由は、「業務が実質的に競争関係にある」「企業価値向上の実現に向けた具体的方策が示されていない」というものです。
以前の記事でも書きましたが、株価に不満があるだけなのなら他の方法だってあるはずで、今回のような行動は失敗した場合のイーアクセスへのダメージが大きいわけです。つまり、目標はそもそもが「アッカ占領」で、株価下落はむしろ「チャンス」だったのではないかとも考えられます。
再度書きますが、千本社長は株式の多数を持っているわけではありませんから、ですから、他の株主の同意を得なければ目的を達する事は出来ません。
アッカを手に入れるためには、まずは現経営陣に退場してもらわねばなりません。現経営陣が良い仕事をしているのであれば経営陣を交代させる理由はありません。そこでまず、現経営陣は駄目であるということを主張しなければなりません。ですからこれからも、アッカ経営陣への悪口が続く事になるかもしれません。「実現可能で具体的な代替案を示さずに」単に悪口を言うだけならば簡単なことですし。
私も株主だ、だから仲間だ、株価が下がっていてみんなが損をしている、私なら上手くやれる、仲間なんだから賛同してくれ、というわけです。
しかし、別の可能性があります。千本社長はアッカの株主である前に「イーアクセスのボス」です。そしてアッカの株主である立場よりも、確実に「イーアクセスのボス」である事の方が重要です。ですから、「アッカの株主の利益」よりも「イーアクセスの利益」の方を優先させることはむしろ自然です。
アッカの「業務が実質的に競争関係にある」というのは、つまり「お前はイーアクセスのボスの立場でものを言っているだろうが」と言うツッコミです。
また「企業価値向上の実現に向けた具体的方策が示されていない」というのは、最初からアッカを良くする事を目的に考えていない(目的は悪口そのもの)から提案の中身だって空っぽじゃないかということです。
しかしだからといって千本社長が素晴らしい提案をしても微妙です。現経営陣が「良い提案ありがとう、それ参考にします。ありがとうね。」と言ってしまえばそれで終わってしまうからです。実際、アッカは「イー・アクセスから事業面で具体的な提案があれば検討する」と言っています。これではアッカを乗っ取る事が出来ません。
◆敵の敵はアッカの味方
もしこの件が頓挫するか泥沼化するとイーアクセス≒イーモバイルは大きなダメージを負います。ですから、イーアクセスの敵にとってこれは千載一遇のチャンスになっている可能性があります。
ですから、アッカは「敵の敵」の協力を得ることができる可能性があります。
例えば携帯関係の話題で言うと、NTTとイーアクセス≒イーモバイルはこれまで仲良くしていたとは思えません。ウィルコムとも険悪です。孫社長からすると千本社長が転ぶと会社が丸ごとが手に入るかもしれません。「敵の敵」の候補は沢山あることでしょう。
特に泥沼化した場合には、イーアクセスは長期間に渡る消耗戦を強いられる可能性もあります。「敵の敵」からすると願っても無い展開かもしれません。
2月14日に発表されるアッカ自身の発表による事業計画が発表されるようですが、まずはこの内容にイーアクセスが付け入る隙がなければ、「別に現経営陣は交代する必要など無い」とか、「イーアクセスとの提携に利益は無い」ということになるかもしれません。もしそうなったとしてまだ騒動は終わらないかもしれませんが、流れは転換するはずです。「敵の敵」はまずこれに協力できます。
一方で千本社長は、おそらく2月14日の発表内容が「どんな内容であろうとも」文句をつけるでしょう。また、どちらにせよ筆頭株主がイーアクセスであることには違いありません。
この対決が続いたまま、両社ともに立候補で2.0Ghz帯争奪戦に入ってしまったらそれは変な事になりそうですね。前回どころではない場外乱闘が見られるかもしれません。また少なくとも、「現在の対立状況が続く限りは2.0Ghz帯争奪戦でアッカとイーモバイルが連合を組む可能性はゼロ」とも言えます。この構図を誰かが喜んでいる気もしますね。
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