805 ソフトバンクの基地局数は3万にも届かず、ホワイトプランがやばかったりする件
本日ソフトバンクの発表があったようです。
ソフトバンク、22日に新端末・新プラットフォームを発表へ
2006年度連結決算は過去最高の実績に
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/34380.html
孫社長「ボーダフォン買収は成功」・ソフトバンク決算会見一問一答
http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=MMITfa000008052007
ニュースのタイトルもそうなんですが、「好調なんですよ風」に発表は展開していたようです。
とりあえず好調なのだという発表だったようでして、それを忠実にニュースにするとそう言うことになるのかなと思っています。ただ、ニュースの内容をよく読むと、これらの記事はきちんと「ツッコミ」を記事内で浴びせているように見えます。
そして、当ブログのことですからツッコミの記事を書きたいと思います。
◆2006年度末での基地局数とか
およそ3万(円周率みたいです)と以前の記事に書いていましたが、発表で具体的な数字が明らかになりました。年度末での携帯基地局数は29404でした。なんと、3万にも到達していませんでした。
メンツをかけて、3万の大台にはなんとしてでも乗せるのではないかと思っていましたので、3万にも到達しなかったというのはちょっと驚きです。
そして、これを受けての新しい公約は以下の通り
・開局済み+工事中で46000を既に超えている
・上半期まで(9月末まで)に46000局を達成する
・そのうちHSDPA基地局は6000局
で、四月末現在では31000局のようです。
まず、「現在工事中のものを完成させるだけで46000に到達する」と発表しているわけですが、これが疑問です。よく考えてみてください、携帯基地局の工事って言うのは半年もかかるのでしょうか。もし本当にリアル工事中であるならば、もっと早く公約は達成できるように思えます。
また、15000局以上も「現在工事中」ということにあります。ちょっと工事中過ぎるのではないでしょうか。本当に工事中?
どうでもいいこと:
三桁区切りで基地局数を書くと、29,404になります。404が目立ちます。404といえば404NotFoundです、縁起悪いでございます。「ソフ(2)トバンク(9)は未来が404NotFound」とか当て字できるな、とか思ってしまいました。
◆HSDPA
開局予定の46000局のうちHSDPAが6000局とあります(記事には)、これは多いのでしょうか少ないのでしょうか?
「HSDPAに関しては、3.6Mbpsから7.2Mbpsに拡張していく準備している。さらに、これを早くするための実験も開始している」とした。
まず、何の実験なのかと思えます。でも、ソフトバンクの自前の技術だと思っている人にはアピールする内容(さすが技術開発もやっているんだなと)なのかもしれません。
実際のところソフトバンクは基本的に「基地局を買ってきて設置する」だけのキャリアですから、7.2Mbps対応の基地局が出たら基地局をアップデートし、さらに先の(14.4Mbps)基地局が出たら同じようにするということでしょう。
7.2Mbpsはまだちょっとかかるでしょうし、14.4Mbpsについてはまだ先の話のようですが。どちらにせよ基地局をアップデートしなければなりません、また工事です。
◆ホワイトプランは・・・
「トラフィックの容量に対して余裕があるからできたビジネスモデルであり、24時間無料通話にすると一瞬でパンクする。21時以降にまで対象を広げるのは携帯電話事業者として難しい。ニーズがあるのはわかっており、技術的にブレークスルーできたらいい」
大方の予想の通り?『無理やり定額』だったということが解ってしまいました。
ウィルコムについては音声定額開始時に「このようにするから大丈夫です」と発表があり、サービスイン後にも、実際のトラフィックがどうなったかの発表があり(予想以上に通話量が増えていた)、インフラが大丈夫で利益も出ているとの説明がありました。
ソフトバンクについてはこれまで説明がありませんでした。
「トラフィックの容量に対して余裕がある」というのは、ボーダフォンユーザの大半が第二世代で第三世代のインフラは空いていた事実を指すものと思われます。記憶によって確認せずに書きますが、ソフトバンクが買収した時に、第二世代ユーザの比率は8割弱だったはずです。
以前の記事にも書きましたが、ボーダフォンは第三世代の設備が遊んでいるので、新規参入相手にMVNOを提供しようとか考えていたようですので、それくらい空いていたというわけです。イーモバイルの定額と基本は同じというわけでしょうか。
で、そんな苛烈なサービスを月980円で提供してしまっているわけです。ソフトバンク大丈夫?
◆ARPU低下
ARPU(月当たりのユーザの支払い平均)も低下してしまいました。
1回線あたりの売上高を示すARPUは、音声通話の減収により第3四半期から350円減少し5210円だった。
もともと携帯三社の中で目立ってARPUが低かったソフトバンクですが、今回またさらに下がってしまいました。
350円はたいした事では無いと思えるならば、以下の計算を見てください。
350円/月・人×12月=4200円/人
4200円/人×1600万人=630億円
#孫社長が「1600万人」と自分で言ったので1600万人で計算
ARPUがそのままに保たれた場合と比べて、630億円の通話料収入が無くなったという事ではないでしょうか?
ソフトバンクは8日、2007年3月期決算の経常利益が前の期の5.6倍の1534億円だったと発表した。
なので、630億円が小さい金額という事もないわけです。また、ホワイトプランはこれからどんどんARPUを下げてゆくはずですから、今年度のARPUはさらにどーんと下がると思えます。ソフトバンク大丈夫?
◆スーパーボーナスのマジック
現在、個人の契約者では、9割を超えるユーザーが新スーパーボーナスによる契約だという。
つまり、9割を超える「端末代金の補助金」は会計上消えちゃってる(先送り)ということです。これについては以前こういう記事を書いておりまして(詳しくは以下の記事)、
「iPod携帯」は「iPod」と「携帯」でした
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2006/09/841_ipodipod_b38a.html
正しくはローンというよりリースなのですがそれはさておき、つまり、他社ではいわゆるインセ(端末代金の補助金)は発生時に損したお金として会計処理されますが、ソフトバンクはこれを「26ヶ月リース+リース料無料」の制度としてしまったため、
・他社:ユーザが端末を買って直ぐに損失となる
・SBM:ユーザが端末を買って直ぐには損失とならず、26ヶ月に渡ってじわじわと損失となりつづける
となります。9割を超える何かが「短期的に会計上消えちゃってる」ことになります。
ソフトバンクの端末が得の他社よりも低機能(=原価が安い)ということもなく、なおかつユーザに端末に関する多額の支出を強いているわけではないので、結局今処理するか先送りするかだけの差でしかなさそうです。
もちろん短期解約の場合の差や、解約したくでも出来ない状態の人を作り出す効果はありましょうが。それはともかくとして。
◆孫社長のディフェンス
孫社長はしかし、「短期的には判断しないでくれ」という感じのことも言っています。
ボーダフォンを買収するときに、沈む船を買ってしまうのではないか、という恐れはあった。MNPの結果、ユーザーが劇的に減るのでは、とも恐れていたが、結果は純増する事ができ大変ありがたい。これから長い戦いになるので一喜一憂するわけにはいかないが、よかったと思っている。
社内的には携帯電話は十年戦争だと言っている。2006年は初動期であり、ボーダフォンを買収し、事業の立て直しを行ない、集中投資をした。2007年度から5年間は成長期として、顧客基盤の拡大、新サービスの投入に取り組む。そして、5~10年後の収穫期に向けて安定した成長、収益の拡大へとつなげる。
私はずっと「傾いた会社を買った以上は当面は忍耐せざるを得ない」という意見ですが、結論としてはそう言うことなのでしょう。問題は、出資者にも忍耐があるかどうかという事と、巻き返すチャンスがもう無い可能性があることでしょうか。
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コメント
HSDPAの基地局は既に14.4M対応です
端末が無いので使えないだけだそうです
端末さえあれば対応できるそうです
(ドコモのHSDPAのインタビューでそう言うコメントがあった)
投稿: 姫 | 2007/05/09 01:55