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881 「ボーダフォン日本法人をソフトバンクが買収へ」の謎について考える

久しぶりに真面目に書いています。

びっくりのニュースが出てきました。
もう皆さんご存知でしょうが、

ソフトバンク、ボーダフォン買収へ…1兆円規模で交渉
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20060304it01.htm?from=top

これはある意味自然な売却でもありながら、以前から成立しないといわれていた話もであり、いろんな意味で無理や謎の多い話です。

これについて私の知っていることをちょっと書いてみましょう。

もっと詳しい人からの親切や、間違っている事や補足がありましたら、何らかの方法でフォローくだされば幸いです。


◆ボーダフォン売却は以前からボーダフォン側からの希望はあった

そうなんです、ボーダフォンの本社(イギリス)は、ボーダフォン日本を売ってしまいたいと以前から思っていた節があります。

しかし、売却は難しいだろうといわれていました。
何故か?

高すぎるからです。

ボーダフォンは1兆円を超える売却になるだろうとは言われていました。
買えるならすぐにでも買いたいところは沢山あったに違いありませんが、しかし、そんなお金を調達できるところがほとんど無かったのです。
そしてさすがのソフトバンクも一兆円は厳しいだろうと言われていました。

そんな大金を用意できるのは、ドコモやトヨタのような非常に儲かっている企業だけであり、ドコモはそもそもドコモであり、トヨタはKDDIの親会社なので、大金を出してまで買う意味が皆無であり、結果として売りたくても売れない、自力での建て直しも上手くいっていないという困った状態になっていると言われていました。

あるとしたらさらなる外資への売却で、規模拡大で気勢をあげている「オレンジ」という携帯会社グループが可能性として上げられる程度だったように思います。しかもオレンジによる買収も別の理由で難しいとされていたそうです。

売るに売れず健全な経営状態にも出来ず、どんどん傾いていってどうしようもなくなって叩き売りになるまで誰も買わないだろう、あるいはそうなっても最後まで誰も買わないだろう、という予想が多かったように思います。


◆冷遇されるボーダフォン日本

もともとボーダフォンはJR系の携帯電話会社のJ-Phoneでした。

写メールブームを巻き起こしたJ-Phoneですが、意図しない形で外資のボーダフォンに乗っ取られてしまいます。

J-Phoneの親会社の日本テレコムは多数の外資企業に株をバランスさせて持たせるということをやっていました。
きちんと調べずにいい加減な記憶を頼りに書きますが、AT&T、ブリティッシュテレコム(BT)、ボーダフォンなどが持っていました。
しかし、JR各社でのいがみ合いなどで意思決定が上手く行かなかった事などから、複数の外資にバランスさせていたはずの株が、隙を突かれる形であれよあれとという間に全部ボーダフォンに集まってしまい、日本テレコムは乗っ取られ、間接的にJ-Phoneも乗っ取らてしまいます。

そのあと用済みになった日本テレコムは冷遇の限りになったあと、ハゲタカ外資に売却され、さらにソフトバンクの手に渡ってしまいます。日本テレコムの社員の方には悪夢の日々だったと聞いています。

J-Phoneはボーダフォン本社によってボーダフォン日本となりますが、ボーダフォンが日本を理解していなかった事や、J-Phoneが絶頂を迎えていたかに見えたころに根本的な技術開発や設備投資を怠っていた事が後になって効いてきてしまい、皆さんご存知のようにボーダフォンは今ではかつての栄華はどこへやらということになっています。

ボーダフォンがダメになりつつある理由は日本人には簡単に感じられることでしたが、それを何とかするためには多額の投資が必要でした。具体的には、
・かつての繁栄の陰で実は手を抜いていた基地局整備などの足回り
・かつての繁栄の陰で実は手を抜いていた次世代技術開発
・かつての繁栄の時代には金のかかる高機能端末をバンバン作っていたが、それを続けるにはお金がかかる
というわけで、かつてのJ-Phoneユーザの誰もが渇望したことは、イギリス本国からの「お金を使うな、黒字にする方を優先」で実行不可能になっていました。

その結果、お金を使う量は減ったけれど、ユーザーも減ってしまい、ユーザーからの信頼も失ってしまいます。

あまりに酷い状態になったので、さすがのイギリス本社も本当の問題に気がつくことになり、そしてここしばらくは、再度お金を使う方向での建て直しになりつつありました。
実際そうですよね。どうしようもなかった一時期と比べると良い端末が発売されるようになり、LOVE定額などの思い切ったサービスも開始されました。
ボーダフォンを使っておられる方で、「最近がんばりはじめた」と喜んでいた人も多いと思います

しかし「日本事業の強化」はボーダフォン本社の株価に悪影響を与えました。
株主が「日本への過剰な投資」を嫌がったのです。
イギリスの本社あたりで、ボーダフォン日本にとって良いニュースが流れると株価が下がり、ボーダフォン日本にとって厳しいニュースが流れると株価が上がるという状態が昨今でした。


◆ソフトバンクの何故?

ソフトバンクが買いたいと思っているに違いないとは以前から言われていた事でしたが、余りに大金が必要になるのでソフトバンクでは資金の用意が難しいとされていました。
かなり無理すれば集められなくは無いとも言われていましたが、かつての「自転車」からせっかく安定した黒字になりはじめているのに、無理をして資金を集めると、また「自転車」に逆戻りです。

そうこうしているうちに、自前での携帯電話事業への新規参入の権利を手にします。
それまでにはソフトバンクは役所や既存の携帯電話会社との多くの苦労もありました。
自前での基地局用地の交渉なども既にかなり行っています。

最初からボーダフォン買収は難しいといわれていた上に、自前での事業展開をかなり進めてしまっています。
エリア展開の追いつかない初期にはボーダフォンの設備を借りてサービスするという報道はありましたが、これは「窮地のボーダフォンの電波と設備を都合よく借りて初期の混乱をしのぎ、自前でサービスできるようになったらボーダフォンとは手を切る」という打算上の提携だと思えました。

ところが買収というわけです。


◆なぜ?

自前でサービスインしようとしているのに、これでは二重投資になりかねません。

ボーダフォンは問題が多いわけで、
・いまだに加入者の多数は第二世代
・第二世代の設備は老朽化
・第三世代はエリアカバー上問題あり
・第二世代と第三世代の設備が二重になっている無駄
・W-CDMAの雲行きが怪しい
この上に、ソフトバンクが新規参入と共に新しい設備を構築したらそれこそ無駄の何段重ねか解りません。

ここまでして買う理由は何でしょう?考えてみました。

・自前でのサービス計画の見通しが実はかなり暗い
新規参入してみたものの、自前でサービスを開始するのは余りにも大変だということがわかって途方にくれている。
#この場合だと「ヤバイから」ということに

・帯域を買った
以前の携帯関連記事で書いたように、新規参入にはサービスにとって重要な「使える電波の帯域」が少ない問題点があります。
#この場合も「ヤバイから」ということに
私がHSDPAの記事にて、定額が如何に難しいか書いたのが遠因だったら面白いのですが(そんなわけが・・笑)

・ユーザ獲得のため
無駄を承知で、ボーダフォンのユーザを全部買い取って、早期にドコモやAUと張り合えるようにする。
#この場合だと「たいへん攻撃的な展開を考えている」ということに

ボーダフォン側の投げ売りではなさそうです。なぜなら「やっぱり買収金額が高い」からです。

展開次第によってはソフトバンクグループそのものを終わらせてしまう原因にもなりかねません(資金の調達方法次第でしょうが)。これは「かなりの大勝負」に見えます。

さて、今後一体どうなるのでしょうか。

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コメント

W-CDMAの雲行きが怪しい、ではなく
Vodafone3Gの雲行きが怪しいのでは?

投稿: KIU | 2006/03/15 10:37

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