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896 iBurstって「第二世代」なんですよ、知ってました?

最近携帯関係のネタが多いなと思いつつ『iBurst』について書いてみたいと思います。

iBurstは定期的にニュースに「未来の通信技術」として登場します。
けれど、その実体についてはあまり理解されていないような気がします。

実のところ私も詳細なことは知らないのですが、そんな知らない私よりもはるかに新聞の原稿書いている人の方が知らないのではないかと思えたりしたので、おそるおそるiBurstについて書いてみます。


◆iBurstは『第二世代』

なんだか良くわからないのですが、「iBurst」は第四世代と思い込んでいる人が多いようです。
未来っぽいなあと思ったものは全て第四世代って思い込んでしまうのでしょうか、ITワナビーさんの手にかかると第四世代という単語すらバズワードのようです。

まず「世代分類」というのは、分類の定義次第なので最初にそれを説明します。
政治的に決められている世代とか、世間の印象で世代を分類する方法もありますが、この分類法は言ったもの勝ちで意味が無いので、以下のような技術的分類ってことにします。

第一世代:FDMA (アナログ時代の携帯、トランシーバ、ラジオ放送局)
第二世代:TDMA (mova、PHS)
第三世代:CDMA (ドコモやAUの第三世代携帯)
第四世代:OFDM (無線LANとか)

で、これによるとiBurstはなんと「第二世代」です。
ウィルコムのPHSに投入されている技術と似た技術です。


◆「世代」はそんなに気にしてはいけません

「第二世代」って聞いて、ローテクでダメな技術だと思ってはいけません。
iBurstは無意味にメディアで騒がれているわけではありませんから、ちゃんと高い能力があります。ですが「第二世代」です。

つまり、○○世代っていうのはそんなに気にしてもしょうがないぞ、というのがまず得るべき教訓です。

PHSに似ていると書きましたが、
・TDMA(時分割多重:つまり第二世代)
・TDD(上がりトラフィックと下りトラフィックを時間で分割:PHSと同じ方式)
・SDMA(同じ周波数を動的指向性アンテナを使って多重利用:ウィルコムのPHS基地局にも採用されている)
という感じです。

大きく違うのは
・マクロセルで、むしろ基地局から遠距離でも安定して通信できることを売りにしているように思われる
・最初から移動しての通信のことを考えてある
あたりでしょうか。

iBurstは机上のプランではありません。既にオーストラリアでサービスインするなどして実用化済みです。

また、京セラはウィルコムの大株主なのでiBurstが次世代PHSに採用される可能性も無くもありませんし噂が立ったこともありますが、ウィルコムは直後にその噂をプレスリリースで否定しました。理由は「マイクロセルではないので(そのままでは)採用する予定がありません」

ちなみに、ウィルコムが開発中と言っている次世代PHSはOFDM-PHSという技術で、第四世代で既存技術(第二世代)を張り合わせたような技術のようなので、こちらはiBurstとは明らかに異なっています。このあたりは若干ややこしい話ではあります。


◆スペック関係

知ってることを書いてみましょう。
まず、iBurstはパケット通信を主眼に設計されています。
ユーザーあたりの最大下り速度は1メガ、上がり速度は300K。
基地局から5キロ程度は通信できるようです。

HSDPAについての記事
904 Docomoが、PCでのデータ通信定額を実現することが難しい理由
を書いたので、それに揃えて帯域あたりの速度も書くと、

・HSDPAが帯域5Mhzにつき理論値3.6メガ(将来は14.4メガ)
なのに対し
・iBurstは帯域5Mhzにつき理論値24メガ(ただしSDMAで8メガ×3)

というわけで、「iBurstって第二世代なのに優秀じゃないですか」というわけになります。

さらに付け加えると、iBurstの数値は現在既にサービスインしている状態での数値であって、iBurstも将来高速化する予定があるようです(HSDPAはまだサービスインしてない)。

また上記の記事でEV-DOを例にして、「3.5世代は実際の利用環境では理論速度にほど遠い速度しか出ない」ということを書きました。(聞いただけの話なので間違っている可能性がありますが)iBurstは理論速度と実速度の差についても3.5世代よりも少ない、らしいです。

iBurstは京セラとアメリカのアレイ・コムという会社が開発しています。なお、アレイ・コムはウィルコム基地局の象徴ともいえる四本槍アンテナ技術の大本だそうです。


◆「WiMAX」と対決する「iBurst」

最近話題といえばWiMAXもむやみに話題です。
WiMAXは第四世代で要するに無線LAN一族に属します。

iBurstは高速移動体通信用の規格「IEEE 802.20」に採用されるようです。

ちなみにWiMAXは「IEEE 802.16」。しかし、標準化が終わっているのは「固定通信用」のWiMAXだけで、モバイル通信用のWiMAX(モバイルWiMAX)はまだ標準化が終わっていません。
ちなみに、iBurstの「IEEE 802.20」はモバイルWiMAXと完全にライバル関係にあります。

モバイルWiMAXも将来どうなるかわからないので(なぜってまだサービスインして定着し、利益を出しているわけでもないでしょ?)、IEEE 802.20ことiBurstがWiMAXを蹴散らして世界中で使われるようなことも無きにしもあらず。

メディアがバカ騒ぎした未来技術PHSが導入後しょっぱいことになったように(→898 ドコモのPHSが終了する理由)、モバイルWiMAXも実際に普及するまでは冷静に見てゆきましょう。もちろん話題の中心的存在では無いiBurstは言うまでもありません。

また、面白いのはこのあたりの将来通信技術で、第三世代ベースの技術が却下されていることです。基本的に第四世代がほとんどですが、それに混じっているのは何と第二世代。


◆結論

「○○世代」という単語の数値に踊らされるのはやめましょう。

念のために書いておきますが、
前の記事の流れからの都合でHSDPAと比較をしましたが、これは将来にわたるドコモの可能性との比較をしたかったのではなく、「3.5世代一般」と「進化系の第二世代」の比較をしてみたかったというのが目的で、意図は「○○世代」という単語にのみとらわれないように、ということです。

ドコモは次世代技術(第四世代)については相当研究していて、巨人ドコモが出してくるであろう次世代技術は侮れないものになるでありましょう。ただし、現時点で実用化されている技術については他の技術に対して大きなリードがあるわけではない、というわけです。将来はわかりません。


関連記事

904 Docomoが、PCでのデータ通信定額を実現することが難しい理由
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2006/01/904_docomopc_a8fe.html

898 ドコモのPHSが終了する理由
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2006/02/898_phs_0100.html

896 iBurstって「第二世代」なんですよ、知ってました?
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2006/02/896_iburst_52b1.html

895 続き:Docomoが、PCでのデータ通信定額を実現することは難しいけれど
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2006/02/895_docomopc_94cc.html

893 誤解を解くと誤解が生まれることもある
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2006/02/893__b47f.html

891 スタパ斉藤さんW-ZERO3を気に入る
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2006/02/891_wzero3_c09b.html

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