895 続き:Docomoが、PCでのデータ通信定額を実現することは難しいけれど
HSDPAでADSL並みのPC定額は難しいと思います、ということを記事にしました。
904 Docomoが、PCでのデータ通信定額を実現することが難しい理由
http://firstlight.cocolog-nifty.com/firstlight/2006/01/904_docomopc_a8fe.html
#以前の、この記事を読んでおられない方は(ざっと)読んでいただけるようお願いします。
その一言が言いたかっただけだったのですが、説明をしているうちに話が広がっています。
せっかくなので、周辺の話を含めてもうちょっと書いてみようということで記事をポストしています。
◆補足:「技術的に不可能」ではなくて、「経済的に理不尽」
前の記事は、「HSDPAでADSL接続並みのPC定額はかなり難しいと思います」ということを説明しました。
あるいは、そういうことだけを説明しました.その理由はADSL要らずになる時代が来るのだと勘違いしている人があまりにも多かった事に心を痛めたためでした。
念のために繰り返しておきますが、絶対不可能だとは言っておりません、かなり無茶をしないと実現できないので難しい、という説明でした。
技術的に不可能ではないということと、経済的に可能であることは違います。例えば、有人火星探査ロケットは技術的に建造可能ですが、建造予算が天文学的非常識なので誰も作りません。そこまでして出かけていっても大して何も得られませんしね。
たとえばそんな感じです。
◆補足:「基地局ごとの帯域」をイメージする良い方法
「基地局につながっている全員で通信速度の取り合いになる」と書きました。
別にメガ単位の速度なんだから大丈夫でしょ?みんなずっと遣っているわけではないし、と思った方はこんな様子をイメージしてみてください。
・ADSL回線を一本引きます
・そのたった一本の接続を数千台のPCで共用します。
かなりでっかいビルがあって、「ビル全体でADSL回線一本だけ」みたいな状況です。
これでも、「最高通信速度○○メガ!」と言い張ることは出来なくはありませんが、実際にはろくでもないことになるのは明々白々です。
こんなビルに入居させられたら速度が出なくて困りますよね。で、そんな感じになりますよ、という話です。
やばいでしょ?
本当の話の本質は「ADSLが一本しか来てないでっかいビル」のようなことになることで、なのでHSDPAが理論値いっぱいの3.6メガを出したところで、ドコモのHSDPAがADSLを滅ぼすようなことはかなり難しいわけです。
◆HSDPAでPC定額をしても儲からない気がする
念のためにもう一度書いておくと、3.5世代でPC定額をするのはあまり意味があるとは思えません。絶対に不可能だとは思いませんが。
PC定額はユーザーが特に大金を支払ってくれるサービスではありませんし(原因はもちろん価格破壊を引き起こしたウィルコムです)、かなり多額の設備投資を必要とします。
低速限定なら大きな設備投資なしでも実現できるかもしれませんが、その場合には速度面でもウィルコムにやり込められてしまいます。
そして電話機でのFOMA利用者(つまりドコモにお金をどんどん払ってくれる上客)に速度低下や通話品質の低下などの悪影響を与えます。一番のお得意さんに迷惑をかけては意味がありません。
オマケにもうすぐ第四世代の登場を控えており、ドコモ自身が第四世代を必死で研究している状態です。今から3.5世代に多額の設備投資をしても、回収する間もなく(下手すると設備の整備すら終わらないうちに)第四世代がやってきてしまいます。
PC定額は第四世代の話題だと思います、あくまでも私の意見ではありますが。
◆HSDPA自体は無意味ではない
しかし、電話機限定で考えるとHSDPAは大きな意味があるように思います。
現在ドコモは無理をしてパケット定額サービスをしています。混雑時間帯には速度が出ませんし、大きな転送量を伴うサービスも出来ていません。
ですが、HSDPAがサービスインすればこれらの点についても現在のAUと肩を並べることが出来ます。
つまり、AUのように高速でメールを受信できるようになり、フルブラウザを定額対象にすることが出来、携帯でムービーを扱ったり、そして何より「着歌」を大々的にサービスインすることができるようになります。そもそも「携帯コンテンツ」はドコモのお家芸だったはずですから、技術的障害が無くなれば着歌でAUを追い落とすことは十分ありえると思います。おそらくドコモは携帯のムービーでも何かやってくれるのではないでしょうか。
#もちろんAUも新技術「EV-DO Rev.A」の導入でまたもやドコモには実現が難しい新サービスを投入してくることでしょうけれど。
HSDPAでADSLと争うのはほとんど無理で、ウィルコムとやりあっても微妙です。しかしAU相手ならかなりの威力を発揮します。
ですから、HSDPAでPC定額の方向にはあまり期待できると思いませんが(第四世代以降の話題でしょう)、従来の携帯電話の方向ではいろいろな可能性があると思います。つまり、元の記事はHSDPAへの期待の仕方を間違っていると思います。
EV-DOが着歌などを生み出したように、HSDPAとEV-DOの競争は日本らしい日本の携帯文化にまた新しい何かを付け加えることになると思います。
あるいは言い換えるなら、ドコモはHSDPAで携帯ユーザからお金を巻き上げる革新的な新サービスを考案し、貴重なHSDPAの帯域はその用途に全力投入すべきだと私は思います。コストで有利なウィルコムとニッチな市場を巡って決死の消耗戦をやっている場合ではない。私はそう思います。
◆新規参入組の「PC定額発言」について
第三世代なのにPC定額、の空気の原因は新規参入組かもしれません。
ソフトバンクや、定額にすると記者会見のたびに息巻いておられるイーアクセスは・・
(全国で使える)帯域がたったの5Mhz分しかありません。
ここまで読んでこられた方はみんな思うでしょう。
「たった5MhzでPC定額って?」
私もそう思います。
新規参入だから利用者が少ないというのはあるでしょう、しかしたった5Mhzです。
何か工夫する予定があるのかもしれませんが、ちょっと難しいのではないでしょうか。
新規参入組の前に立ちはだかるのもウィルコムです。
低額定額のPC定額ではウィルコムに勝てません。
音声定額で勝負に出たくとも、ウィルコムが「2900円定額」の価格破壊を既にやってしまっています。
日本的ケータイの高付加価値の方に行こうとしても、今度はAUとドコモがEV-DOとHSDPAで熾烈なサービス合戦をすることでしょうからなかなか難しいでしょう。
というか皆さん、思いませんか?
新規参入組が大活躍できるのなら、どうしてボーダフォンは辛酸をなめているのか?
もし新規参入組が好調となるとしたら、既存各社がやっていないところで活躍するしかないと思いますが(ウィルコムも「他社がやっていないこと」を開拓して成功しています)、そんな領域はもう残っていないように思えます。
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